【第2話】Team History 2011-2019

エッセイ
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初めての活動以降は、月に1度くらいの頻度で体育館を借りては、ひたすら紅白戦を行っていたのだが、徐々に綻びが見え始めていた。
そして、結成から半年が経ったある日、それが形となって現れた。

楽しく出来ればいいのに、文句を言われてまでバスケがやりたいとは思えない。

池ちゃんがそう言った。

原因は、経験者である増田が、紅白戦を重ねる度に初心者への要求が強くなっていったことだった。本人に悪気はないのだが、どうしてもゲーム中は熱くなってしまう性格だった。自分と平田はその性格を知っていたし、経験者である宏嗣や和也には何も言わない。初心者のメンバーから見ると、それはもう面白くなかったと思う。

これはいかんと、池ちゃんの気持ちをひと通り聴いてすぐに増田へ注意を促した。
本人は二つ返事で分かったと言ってくれたものの、ひと時でも池ちゃんがそのような気持ちになってしまったということは事実。増田はそういう性格だからと割り切っていたが、自分以外への配慮が足りなかったと猛省した。

この件が落ち着いてからは、少しずつ紅白戦以外の練習メニューも増えていき、レベルが低いなりにチームらしくなってきた。

しかし、チームの綻びの全ては解決されていなかった。

後日、次は毎熊からこんな申し出があった。

バスケには参加したいのだが、お金が無いからバスケに行けない。

当時使用していた体育館の料金は1時間210円。交通費にはそれぞれ住んでいる地域によって差があったものの、毎熊よりも遠くから参加してくれている参加者も居た。何より、毎熊の意思に反していることに納得がいかなかった。
毎熊には、バスケを5回するために遊びを1度我慢すれば問題ない、という主旨の話や、お金の面はみんなで工面することを伝えて説得をしたが、叶わなかった。

チーム初の脱退。体育レベルの紅白戦だけをするチームが何を大袈裟な。と思われるかもしれないが、自分にとっては大きな損失だった。

残念な気持ちを抱えていたところ、更に追い討ちをかける出来事が起こる。

その日の夜、平田・増田・真也・遼の4人でメールのやり取りをしていたのだが、真也が送ってきたメールには添付画像付きでこう記されていた。

毎熊、好き放題言いよる。

添付画像を開いてみると、毎熊が某SNSに自分の悪口を書き連ねていた。

「自分が正しいと思っていることを押し付ける人、ほんとに無理。暑苦しい。見ていてイライラします。」

言葉が出なかった。

自分が全て正しかったとは思っていない。チームに残ってほしい気持ちを全面に出してしまったことは認めるが、バスケがしたくても出来ないということで毎熊の気持ちを聴いていたので、決してバスケを強要をしたつもりはなかった。
好き放題書かれていたことはとても悲しかったけれど、怒りはなかった。これを見た遼が、許せないと毎熊にすぐ連絡を取ってくれたおかげもあったかもしれない。
次の日、学校で毎熊が謝りに来てくれたが、話せるような心持ちではなかったため、自分はいいから平田たちに謝ってくれとしか言えなかった。自分は謝ってほしかったわけではなく、バスケ以外に時間を使いたいのであれば、嘘を言わずにそう言ってほしかっただけだった。何を言われても気にしない性格だと思っていたが、実際にSNSを通じて書かれていたと思うとかなり辛かった。

その日以降、毎熊がバスケに来ることも無く、高校卒業までほとんど会話もしなかった。あの時の自分の行動の、何が正しくて何が間違っていたのか、分からないまま高校生活を終えた。

社会人になってから数年、自分は転職をすることになるのだが、その転職先にはなんと毎熊が居た。高校生ぶりの再会となった2人で、早々に飲みに行くことになった。

あの頃は本当にごめん。

お互いにそう言ったと思う。
毎熊は、SNSを通じて悪口を書いたこと。そして自分は、正論を振りかざして毎熊を追い込んでしまったこと。

あの一件が起こった後、サッカー日本代表の長谷部誠選手が書いた「心を整える。」という本を読んだ。長谷部選手がキャプテンを務めていた高校時代のエピソードで、「自分が正しいと思ったことを仲間に厳しく指摘し、衝突することがあった。その頃の自分は、正論を振りかざしていた」というような話が描かれていたと記憶している。
当時の自分と長谷部選手を重ねてと言うと甚だおこがましいのだが、そのエピソードを知ったとき、毎熊にもう少し違う言い方が出来なかったものかと考えさせられた。

読者の方がもし、毎熊が悪者に映ってしまっていたら誤解しないでほしい。間違いなく、毎熊と同じだけ自分にも非があった。毎熊は、自分を許してくれてありがとうと言ってくれたけれど、こちらこそありがとう。人の意見に噛みついてばかりだった自分が、他人の意見に耳を傾けるようになった。そうさせてくれた大きな要因が、この毎熊との衝突だったことを忘れないでほしい。

長野、ほんと丸くなったよねえ。

最近の毎熊は事あるごとにそう言ってくれるが、今だから言わせてほしい。

ほんと、お前のおかげだわ。


続く

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エッセイ
歩く人と止まる人

さて、今日の記事は何を書こうか。記事を書けない状況にあるときには次々と書きたい話題が次々と出てくるのに、かしこまって考えてしまうと出てこない。駅からはバスで帰るため、駅に着くまでの20分間で今日更新する内容を決めよう。文章はそれからだ。最近買い替えたばかりのスマートフォンをポケットにしまった。

エッセイ
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【第14話(終)】Team History 2011-2019

こんな経験が出来たのは、ひとえに自分の発言に賛成し一緒にHYTを立ち上げてくれた平田・増田。Planetとして活動するきっかけを作ってくれた上野・敦志。活動休止後に再起を促してくれた健斗・宏嗣・和也。そして村崎・蓮・泰樹をはじめ、今までもこれからもチームに関わってくれたメンバーや周りの支えがあってこそだと、心から感謝している。

エッセイ
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【第13話】Team History 2011-2019

前回参加していた時はリーグの参加は強要していなかったものの、「みんなが出るなら…」くらいの気持ちで登録をしてくれていた人もいると思う。しかし今回の選手登録は、同じように「出たい人は登録して、試合は出なくてもいいという人は強制はしない」と言い、それぞれが本当の気持ちで登録したり、登録しなかったりの選択が出来た。