【第5話】Team History 2011-2019

エッセイ
2

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Planet体制になって、すぐに冬を迎えた。

この頃のメンバー構成は、HYT発足時と比べると経験者が大多数を占めていた。紅白戦のレベルも発足時よりも遥かにレベルが上がっていて、その環境で際立ってくるのは、もちろんバスケ未経験者だった。

このチームにいる未経験者の代表格が他でもない、あそふくメンバーである村崎だ。

村崎がバスケを始めたのは、間違いなく「その場のノリ」だった。高校卒業間近に、少しばかり仲が良かったという理由だけで参加してくれただけで、当時はその時限りの参加だろうと誰もが思っていた。自分の目が節穴でなければ、村崎自身もそう思っていたはずだ。
しかし、Planet体制に入ってからのバスケには、必ずと言っていいほど彼が居た。バスケがそれほど好きで参加していたわけではないし、周りの経験者のテクニックを目の当たりにしては「すげえ」「うめえ」と呟いていた。

そんな村崎の誕生日が、2週間後の12月20日に迫っていた。

その時、平田と敦志に声をかけ、村崎の誕生日にボールをプレゼントしたいから折半してくれないかと頼み込んだ。経験者ばかりの環境で頑張っていた村崎を、本当にバスケットボールにのめり込ませようと目論んでの提案だった。
2人は、二つ返事で喜んで協力してくれた。大胆にも、村崎を加えた4人で買い物に出かけ、「チームのボールを1つ買う」と言って、本人の前でプレゼントを購入した。何事に対しても疑うことを知らない村崎は、この買い物にひとつの違和感も覚えなかったのだろう。

迎えた12月21日の練習。
この日は年末最後の練習ということもあって、来季シーズンを戦うメンバーへのユニフォームの配布と、フリースロー大会をするように計画していた。このフリースロー大会で仕掛けた。

フリースロー大会と大袈裟に催したものの、景品は使わなくなったゲームや雑貨屋さんで買った小さなパズル、更には百均のおもちゃなど、お世辞にも貰って嬉しいものはほとんどなかった。フリースローを早く決めた人からクジを引くようなシステムにしていたため、優勝したからといって良い景品が貰えるとは限らない。我ながら、公平な(ある意味不公平な)フリースロー大会である。
そして、参加人数に対して景品が1つ足りないという状況を作って、村崎が必ずハズレを引くような細工をした。人を喜ばせるには、一度しっかりと落ち込ませるのがミソだと思う。ここでも彼は変わらず素直だったので、しっかりと落ち込んでくれたことを覚えている。

全員が景品を受け取ったあと、わざとらしく「ハズレやった人〜?」と尋ねると、間髪入れずに村崎が元気よく返事をした。言われなくとも、そんなことは知っている。
ここで両手を差し出し目を瞑るように促して、裏手に隠れていた上野と健斗がニヤニヤしながら姿を現す。2人の手には、これでもかと言うほどのパイが盛り付けられた皿。そして次の瞬間。

差し出した手を完全に無視して、勢いよく2皿のパイが村崎の顔を覆い尽くした。

しかしまだ落ち着かせてはいけない。
後ろに後退しながら顔を手で拭う村崎の視界が開けたとき、和也から「誕生日おめでとうございます!」と、先週一緒に買ったはずのボールをプレゼント。同時に、みんなが隠し持っていたクラッカーの音が体育館に鳴り響いた。

「誕生日!?ありがとう!!」

一瞬間があったものの、顔についたパイと状況を飲み込んだ村崎が叫んだ。作戦は大成功である。

その後、これでイベントが終わったと思わせたところで、平田の兄である「あにーじゃ」に婚約祝いのパイ投げを同時に行った。村崎のサプライズにしっかりと協力してくれていたあにーじゃも完全に予期していなかった出来事だったと思う。2人とも、顔を真っ白にしながら喜んでくれた。

突然の提案にも快く協力してくれたチームメイトも、一緒になって楽しんでくれたことがとても嬉しかった。自分の目指すチーム像が、このとき垣間見えた気がした。

そして、村崎はこれを境に、バスケットボールというスポーツの楽しさにどっぷり浸かっていくことになる。


続く

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エッセイ
歩く人と止まる人

さて、今日の記事は何を書こうか。記事を書けない状況にあるときには次々と書きたい話題が次々と出てくるのに、かしこまって考えてしまうと出てこない。駅からはバスで帰るため、駅に着くまでの20分間で今日更新する内容を決めよう。文章はそれからだ。最近買い替えたばかりのスマートフォンをポケットにしまった。

エッセイ
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【第14話(終)】Team History 2011-2019

こんな経験が出来たのは、ひとえに自分の発言に賛成し一緒にHYTを立ち上げてくれた平田・増田。Planetとして活動するきっかけを作ってくれた上野・敦志。活動休止後に再起を促してくれた健斗・宏嗣・和也。そして村崎・蓮・泰樹をはじめ、今までもこれからもチームに関わってくれたメンバーや周りの支えがあってこそだと、心から感謝している。

エッセイ
2
【第13話】Team History 2011-2019

前回参加していた時はリーグの参加は強要していなかったものの、「みんなが出るなら…」くらいの気持ちで登録をしてくれていた人もいると思う。しかし今回の選手登録は、同じように「出たい人は登録して、試合は出なくてもいいという人は強制はしない」と言い、それぞれが本当の気持ちで登録したり、登録しなかったりの選択が出来た。