第9話はこちら
Planetとして2年目のシーズンが始まった。この時からリーグは参加チームの増加により拡大し、このシーズンは5部で戦うことになった。
開幕戦の相手は「GMR」
その日集まったメンバーはギリギリの6人、相手にはサイズの大きい選手が居たものの危なげなく勝たせてもらった。昨シーズンと大きく違うところは、技術よりもむしろ「試合慣れ」だった。
Planetは気持ちの優しいプレイヤーが多く、おそらく他のチームよりは血の気が少ない。紳士的といえば聞こえはいいが、闘争心に欠けている部分があるのもまた事実。昨シーズンは対戦相手のペースに合わせてしまうというシーンが目立っていたが、この試合に限って言えばある程度自分たちのペースで試合が運べたのではないだろうか。
開幕戦で白星を飾り、幸先の良いスタートを切ったチームだったが、相対して練習の参加率が極端に減り始めた。この時は気付かなかったが、ほとんどのメンバーが「1シーズンを戦い抜いた」ことで慢心し、熱が冷めきっていたような状況に陥っていた。
単純に参加率が落ちると、参加してくれているメンバーのモチベーションが下がってくる。少ない人数での金銭のやりくりも難しかったため、人数が少ない日にはなるべく体育館の予約をキャンセルし、運営の維持に努めようとしたものの、出欠の連絡をしないメンバーや、当日になってドタキャンするメンバーが後を絶たなかった。こうなってしまっては1人でどうにも出来ないので、定期的に協力のお願いを仰いでいたものの、応えてくれるメンバーも居なかった。
その後、チームの練習の頻度が落ちていくことと比例して、リーグも棄権することが多くなった。リーグの運営側も、棄権されることで空いた枠に別のチームを招聘し、親善試合を組まなければならない。かなり苦労をかけていたことも分かっていたので、棄権の連絡をする度に胸が締め付けられる思いだった。
SNSを通じて参加してくれる方々も数人居たものの、何かにつけて健斗が難癖をつけては追い返す形になってしまっていた。直接本人に言わずとも、そういう負の感情は連鎖する。キャプテンとしてすべきことは、その流れを断ち切ることだったのだが、なだめる程度で終わっていた。あの時を振り返る度に自分が情けなくてしょうがないのだが、健斗が居ないと試合にならないことを理由に現実から目を背けていた。
しかし、これだけは誤解してほしくないのは、健斗にも悪気があったわけではないということ。もちろん、参加してくださった方はこれまでのチームの雰囲気など分からない。自分から見ていても「ん?」と疑問に思うプレイがあったことも否定はしない。ただ、当時の健斗には配慮の気持ちが欠けていただけなのだ。この後、ある出来事をきっかけに健斗は大きく成長する。その話を綴るまで、どうか健斗と言う人間を否定しないでほしい。
そして、2シーズン目が終盤に差し掛かった頃。リーグ側へ、3シーズン目でのリーグ脱退を申し入れた。チームの崩壊危機とともに、2015年も終わろうとしていた。
そして年を越して迎えた2016年3月。
チームは最悪の事態を迎える。
その日、嬉しいことに早い時間にメンバーが8人集まった。残り2人来れば久しぶりの紅白戦が出来る。素直にワクワクしていたことを鮮明に覚えている。
アップを終えて、それぞれシューティングなどをしている時に健斗と宏嗣が遅れて参加してきた。2時間ある練習時間のうち、40分が経過していた。
ほどなくして、久しぶりの紅白戦が始まった。誰が調子が良かったとか、どちらのチームが勝ったとか詳しいことは覚えていないけれど、単純に楽しかった。そして片付けの時間を考慮して「次の1本で今日は終わろうか」と促した時だった。
「ええ〜あと2本出来るやろ」
健斗と宏嗣がそういう主旨の話を始めた。もちろん自分に宛てられた言葉ではないことは分かっていたけれど、自分の中で抱えていたモヤモヤが爆発しそうになった。
お前らが時間通りに来れば
こんなことにはならんやったことやろ。
口には出さなかったが、さっきまで溢れていた楽しい気持ちを完全に失ってしまった。迎えた次の1本、1歩たりとも走らなかったし、同じチームだった健斗の方さえ見なかった。バスケどころじゃない。溢れてくる怒りを抑えることで精一杯だったが、様子が変わったことに気づいた健斗は面白くなかったのだろう。自分へのパスの質をあからさまに落とした。
終了のタイマーが鳴ったあと、人の居ない体育館の外に出て思い切り壁を蹴った。
正直めちゃくちゃ痛かったけれど、どうしても人にだけは当たりたくて、だけど矛先を向ける場所もなかったが故の行動だった。
誰一人としてこの状況を理解してくれないものなのか。それとも自分の力不足が招いた結果なのか。とにかく孤独で悔しかったし、二度とバスケをしたくないとさえ思った。
少し気持ちを落ち着かせてから、健斗たちと仲の良かった和也を呼んで簡単な経緯を話した。仲の良い友達のことを責められているわけだから、和也だって良い気持ちはしなかったはずだ。この時、うんうんと話を聴いてくれた和也にはごめんねの気持ちでいっぱいだった。
後にも先にも、バスケットボールというスポーツを通じて、ここまで辛いと思った日はなかった。
続く
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[…] 第8話はこちら恵介が去った後のチームは、以前よりも少しずつではあるが声が飛び交うようなチームに成長していた。迎えたリーグ戦ではなかなかチームとしては結果が出なかったものの、夏ごろからある選手がメキメキと頭角を現していくことになる。夏になると、2回目の参戦となったベスメン大会と、その翌週にはフープリーグの土日2連戦が続いた。ここでも残念ながら勝利をもぎ取ることはできなかったのだが、この3連戦で絶好調だったのが健斗だ。中に切れ込んでも、外から打たせてもとにかく点が入る。もちろん、ほかのメンバーよりもボールを持つ時間が長かったことはたしかだが、驚いたのはその精度だった。健斗はこのTeam Historyを常にチェックしてくれているので「違いますよ!」と言われてしまうかもしれないが、とにかくこの時期は毎試合20点以上を稼ぐのが当たり前といっても過言ではないほど活躍していたはずだ。その後も公式戦ではなかなか結果が出ない日々が続いていたのだが、秋口に入ったころのリーグ戦でいよいよ結果が出る。この試合で対戦したのは「三和クラブ」初めて対戦するチームで、平均年齢は相手が上だったものの、若くて大きい選手が2人、インサイドでプレイしていたような記憶がある。この試合ではこれまでと違い、前半でかなりのリードを奪う。ハーフタイムの段階では、勝てるんじゃないかと完全に油断していた。迎えた後半、相手が2-3のゾーンディフェンスに切り替えたところで状況は一変する。ミドルサードで打たされるような展開が続き、徐々にシュートタッチも悪くなった。速攻で崩されるような展開にはならなかったものの、こちらの点数が入らないことでじりじりと点差を詰められ、ついに逆転された。最終ピリオドに入っても状況は変わらなかったのだが、3点差をつけられたタイミングで健斗が放ったミドルシュートのこぼれ球を宏嗣がなんとかゴールにねじ込み1点差に詰め寄ると、続く相手の攻撃を宏嗣がわずかに触ってカット。ルーズボールを拾った和也が矢のようなボールを前線に送ると、走り出していた健斗がそれに反応した。ここで事件が起こる。パスカットを狙った相手選手がボールに触れ、それが健斗のおなかに当たり、一瞬エンドラインを越えたかに思われた。健斗はそのまま後ろを追ってきていた上野にパス。ここでパスカットを狙った選手がアツくなり、まるでアザラシのような声で審判に抗議をしたものの、笛はならない。大会の途中でRADWIMPSのライブに行くような冷徹人間代表の上野がその隙を見逃すはずがない。どフリーの状態でしっかりと体勢を立て直した放ったスリーポイントシュートがリングを射抜いた。非情にも、シュートを沈めた上野はいつものようにニヤニヤしていた。その後、相手にフリースローのチャンスを与えてしまったものの、相手選手が2本とも外してくれたおかげで試合終了。ぎりぎりの接戦をものにした、嬉しいリーグ初勝利だった。結局、Planetのリーグ参入となったこのシーズンは、この試合以外は全て負けてしまった。もちろん結果だけ見ると残念なシーズンではあったが、チームとして年間のリーグ戦を戦い抜いたという点では収穫だった。チームとしての団結が深まり、ようやく出場した公式戦での勝利。Planet体制になってからというもの、何もかもが新鮮で楽しかった時間を過ごしていたが、次のシーズンは誰もが予想だにしなかった結末を迎えることになる。続く第10話はこちら […]
[…] 第10話はこちら事件の次の日、健斗から着信があり、会って話がしたいと言われた。ある程度気持ちも落ち着いていたし、家も近かったので二つ返事でOKした。昨日は何も考えずにすみませんでした。会って早々、健斗が謝ってくれた。話を聴いてみると、バスケの後、和也が発起して健斗と宏嗣の3人で話をしたらしい。3人の詳しい会話の内容までは覚えていないが、考えを改めたとのことだった。それから冬空の下、1時間以上話していたと思う。これまでチームを1人で運営してきたこと、話しても話しきれないほどの苦労があったこと、それでもいまのメンバーが大好きで、ここまでついてきてくれたことへの感謝は尽きないこと。そして健斗個人にも、チームがたくさん助けられてきたこと。募った想いを一通り話して、健斗はしっかりと耳を傾けてくれた。健斗たちだけが悪い訳ではなく、上手く分散できなかった自分にも責任があった。結局、毎熊と衝突したときから何も変われていなかったんだと痛感した。抜けるところで力を抜けず、抱え込んだ不安を、責任感を盾に振りかざしていた。全てを話したスッキリしたことに間違いはなかったけれど、同時に自分の不甲斐なさを改めて知った。健斗たちの気持ちは素直に嬉しかったし、バスケとチームへの愛情が無くなるはずがなかった。だけど、一度切れてしまった気持ちをすぐに取り戻すことはとても難しかった。そして、この日を境に練習は更に頻度が減り、体育館を借りることもやめた。チームは事実上の活動休止となった。続く[番外編!]今回は話の内容の関係で記事が短くなってしまったので、完全な独断と偏見ですが、いまのPlanetを構成するメンバーの紹介をします!(ちょーの)本名は長野(ながの)。恥ずかしながら、この物語の筆者で、チームの創設者です!(ひらた)あそふくメンバーの平田。身軽なフットワークとスピードで相手を翻弄!(むらさき)あそふくメンバーの村崎。チーム唯一の初心者。彼のゴールでチームは息を吹き返す!(上野)積極果敢なプレスとスリーポイントで流れをひきよせる。勝利の裏には上野がいるが、ライブになるとすぐ帰る!(健斗)丸亀製麺のうどんですくすくと育った現体制のキャプテン。次回より語られる健斗の成長に、目が離せないはず!(和也)冷静な判断とシュートセンスが光るユーティリティプレイヤー!誰よりも村崎のことが大好き。ほんとに大好き。(宏嗣)とってもマイペースな性格とは裏腹に、インサイドで果敢に戦ってチームを支えてくれる大黒柱!頼りになります!(泰樹)力強いリバウンドでチームに勢いをもたらしてくれるファイター!体育館で服を脱いで管理人に怒られたのは良い思い出。笑(蓮)広い視野と鋭いドライブで相手を脅かすPlanetのポイントガード!経験値も豊富で、蓮に褒められるとステータス。笑(礼央)県外から度々足を運んでくれる優しい性格。泰樹、宏嗣とともにインサイドを制圧するセンター!(黎一)軽いモーションから放たれるスリーポイントで相手ゴールを撃ち抜く!明るい性格でチームを盛り上げてくれるカワイイ後輩!(高屋くん)冷静に相手の隙を突くクールなプレイヤー!スティールで速攻を決めてチームの流れを引き寄せる!他にも、これまでチームに関わってくれたメンバーが沢山います!今回は一部のみ紹介させていただきましたが、今後の物語の中にも色んな人が登場するので、楽しみにしていてくださいね! […]