第10話はこちら
事件の次の日、健斗から着信があり、会って話がしたいと言われた。ある程度気持ちも落ち着いていたし、家も近かったので二つ返事でOKした。
昨日は何も考えずにすみませんでした。
会って早々、健斗が謝ってくれた。
話を聴いてみると、バスケの後、和也が発起して健斗と宏嗣の3人で話をしたらしい。3人の詳しい会話の内容までは覚えていないが、考えを改めたとのことだった。
それから冬空の下、1時間以上話していたと思う。
これまでチームを1人で運営してきたこと、話しても話しきれないほどの苦労があったこと、それでもいまのメンバーが大好きで、ここまでついてきてくれたことへの感謝は尽きないこと。そして健斗個人にも、チームがたくさん助けられてきたこと。
募った想いを一通り話して、健斗はしっかりと耳を傾けてくれた。健斗たちだけが悪い訳ではなく、上手く分散できなかった自分にも責任があった。結局、毎熊と衝突したときから何も変われていなかったんだと痛感した。抜けるところで力を抜けず、抱え込んだ不安を、責任感を盾に振りかざしていた。
全てを話したスッキリしたことに間違いはなかったけれど、同時に自分の不甲斐なさを改めて知った。健斗たちの気持ちは素直に嬉しかったし、バスケとチームへの愛情が無くなるはずがなかった。
だけど、一度切れてしまった気持ちをすぐに取り戻すことはとても難しかった。そして、この日を境に練習は更に頻度が減り、体育館を借りることもやめた。
チームは事実上の活動休止となった。
続く
第12話はこちら
[番外編!]
今回は話の内容の関係で記事が短くなってしまったので、完全な独断と偏見ですが、いまのPlanetを構成するメンバーの紹介をします!
(ちょーの)
本名は長野(ながの)。恥ずかしながら、この物語の筆者で、チームの創設者です!
(ひらた)
あそふくメンバーの平田。身軽なフットワークとスピードで相手を翻弄!
(むらさき)
あそふくメンバーの村崎。チーム唯一の初心者。彼のゴールでチームは息を吹き返す!
(上野)
積極果敢なプレスとスリーポイントで流れをひきよせる。勝利の裏には上野がいるが、ライブになるとすぐ帰る!
(健斗)
丸亀製麺のうどんですくすくと育った現体制のキャプテン。次回より語られる健斗の成長に、目が離せないはず!
(和也)
冷静な判断とシュートセンスが光るユーティリティプレイヤー!誰よりも村崎のことが大好き。ほんとに大好き。
(宏嗣)
とってもマイペースな性格とは裏腹に、インサイドで果敢に戦ってチームを支えてくれる大黒柱!頼りになります!
(泰樹)
力強いリバウンドでチームに勢いをもたらしてくれるファイター!体育館で服を脱いで管理人に怒られたのは良い思い出。笑
(蓮)
広い視野と鋭いドライブで相手を脅かすPlanetのポイントガード!経験値も豊富で、蓮に褒められるとステータス。笑
(礼央)
県外から度々足を運んでくれる優しい性格。泰樹、宏嗣とともにインサイドを制圧するセンター!
(黎一)
軽いモーションから放たれるスリーポイントで相手ゴールを撃ち抜く!明るい性格でチームを盛り上げてくれるカワイイ後輩!
(高屋くん)
冷静に相手の隙を突くクールなプレイヤー!スティールで速攻を決めてチームの流れを引き寄せる!
他にも、これまでチームに関わってくれたメンバーが沢山います!今回は一部のみ紹介させていただきましたが、今後の物語の中にも色んな人が登場するので、楽しみにしていてくださいね!
Other
2件のコメント
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[…] 第9話はこちらPlanetとして2年目のシーズンが始まった。この時からリーグは参加チームの増加により拡大し、このシーズンは5部で戦うことになった。開幕戦の相手は「GMR」その日集まったメンバーはギリギリの6人、相手にはサイズの大きい選手が居たものの危なげなく勝たせてもらった。昨シーズンと大きく違うところは、技術よりもむしろ「試合慣れ」だった。Planetは気持ちの優しいプレイヤーが多く、おそらく他のチームよりは血の気が少ない。紳士的といえば聞こえはいいが、闘争心に欠けている部分があるのもまた事実。昨シーズンは対戦相手のペースに合わせてしまうというシーンが目立っていたが、この試合に限って言えばある程度自分たちのペースで試合が運べたのではないだろうか。開幕戦で白星を飾り、幸先の良いスタートを切ったチームだったが、相対して練習の参加率が極端に減り始めた。この時は気付かなかったが、ほとんどのメンバーが「1シーズンを戦い抜いた」ことで慢心し、熱が冷めきっていたような状況に陥っていた。単純に参加率が落ちると、参加してくれているメンバーのモチベーションが下がってくる。少ない人数での金銭のやりくりも難しかったため、人数が少ない日にはなるべく体育館の予約をキャンセルし、運営の維持に努めようとしたものの、出欠の連絡をしないメンバーや、当日になってドタキャンするメンバーが後を絶たなかった。こうなってしまっては1人でどうにも出来ないので、定期的に協力のお願いを仰いでいたものの、応えてくれるメンバーも居なかった。その後、チームの練習の頻度が落ちていくことと比例して、リーグも棄権することが多くなった。リーグの運営側も、棄権されることで空いた枠に別のチームを招聘し、親善試合を組まなければならない。かなり苦労をかけていたことも分かっていたので、棄権の連絡をする度に胸が締め付けられる思いだった。SNSを通じて参加してくれる方々も数人居たものの、何かにつけて健斗が難癖をつけては追い返す形になってしまっていた。直接本人に言わずとも、そういう負の感情は連鎖する。キャプテンとしてすべきことは、その流れを断ち切ることだったのだが、なだめる程度で終わっていた。あの時を振り返る度に自分が情けなくてしょうがないのだが、健斗が居ないと試合にならないことを理由に現実から目を背けていた。しかし、これだけは誤解してほしくないのは、健斗にも悪気があったわけではないということ。もちろん、参加してくださった方はこれまでのチームの雰囲気など分からない。自分から見ていても「ん?」と疑問に思うプレイがあったことも否定はしない。ただ、当時の健斗には配慮の気持ちが欠けていただけなのだ。この後、ある出来事をきっかけに健斗は大きく成長する。その話を綴るまで、どうか健斗と言う人間を否定しないでほしい。そして、2シーズン目が終盤に差し掛かった頃。リーグ側へ、3シーズン目でのリーグ脱退を申し入れた。チームの崩壊危機とともに、2015年も終わろうとしていた。そして年を越して迎えた2016年3月。チームは最悪の事態を迎える。その日、嬉しいことに早い時間にメンバーが8人集まった。残り2人来れば久しぶりの紅白戦が出来る。素直にワクワクしていたことを鮮明に覚えている。アップを終えて、それぞれシューティングなどをしている時に健斗と宏嗣が遅れて参加してきた。2時間ある練習時間のうち、40分が経過していた。ほどなくして、久しぶりの紅白戦が始まった。誰が調子が良かったとか、どちらのチームが勝ったとか詳しいことは覚えていないけれど、単純に楽しかった。そして片付けの時間を考慮して「次の1本で今日は終わろうか」と促した時だった。「ええ〜あと2本出来るやろ」健斗と宏嗣がそういう主旨の話を始めた。もちろん自分に宛てられた言葉ではないことは分かっていたけれど、自分の中で抱えていたモヤモヤが爆発しそうになった。お前らが時間通りに来ればこんなことにはならんやったことやろ。口には出さなかったが、さっきまで溢れていた楽しい気持ちを完全に失ってしまった。迎えた次の1本、1歩たりとも走らなかったし、同じチームだった健斗の方さえ見なかった。バスケどころじゃない。溢れてくる怒りを抑えることで精一杯だったが、様子が変わったことに気づいた健斗は面白くなかったのだろう。自分へのパスの質をあからさまに落とした。終了のタイマーが鳴ったあと、人の居ない体育館の外に出て思い切り壁を蹴った。正直めちゃくちゃ痛かったけれど、どうしても人にだけは当たりたくて、だけど矛先を向ける場所もなかったが故の行動だった。誰一人としてこの状況を理解してくれないものなのか。それとも自分の力不足が招いた結果なのか。とにかく孤独で悔しかったし、二度とバスケをしたくないとさえ思った。少し気持ちを落ち着かせてから、健斗たちと仲の良かった和也を呼んで簡単な経緯を話した。仲の良い友達のことを責められているわけだから、和也だって良い気持ちはしなかったはずだ。この時、うんうんと話を聴いてくれた和也にはごめんねの気持ちでいっぱいだった。後にも先にも、バスケットボールというスポーツを通じて、ここまで辛いと思った日はなかった。続く第11話はこちら […]
[…] 第11話はこちらチームの活動が止まってから、1年の歳月が流れようとしていた頃、以前と同じように健斗から連絡があった。ちょっと話したいことがあるんですけど…。別のチームを見つけたからそっちで活動しますとか、そういう話かもしれないと思いながら、近所のファミレスで集まることになった。そして健斗の口から、意外な言葉が出てきた。和也と宏嗣と、やっぱりこのチームでもう1回活動したいって話をしました。和也の友達の蓮と泰樹も一緒にしたいって言ってくれているので、またチームとしてやり直したいです。相変わらずカワイイ顔をしていた健斗だったが、暫く会わないうちに頼もしくなっていた。そして、この話をこの場に、一番に持ってきてくれたことが嬉しかった。チームの活動が止まった後、何度も後悔していた。事実上、チームを活動休止に追いやってしまった自分のやり方を責める日もあった。健斗はもう一度チャンスをくれないかというニュアンスでお願いをしに来てくれたが、自分も同じ気持ちだったし、逆に自分がチャンスをもらいたいくらいだった。しかし、健斗の目は本気だった。この1年、健斗は知り合いの別のチームでバスケを続けていて、チーム運営の実情を見た。そのチームは、自分の中学時代のコーチが所属しているチームだったのだが、定期的にキャプテンを変更したり、みんなで集まって方針を話し合ったりしていたそうで、健斗の目には新鮮に映っていた。そして同時に、「長野さんはこれを5年以上も1人でやり続けていたのか」と思ったとのこと。かなり苦労を感じていたことは否定しないが、健斗が1年間所属していたチームほど活発ではなかったので、おこがましいと思った。それでも健斗は、別のチームに所属することでPlanetのこれまでを客観的に捉えてくれるような人間に成長していた。健斗やその年代のメンバーの熱意をありがたく受け取って、チームとしての活動を再開することに賛成した。この時、彼らが発起してくれなかったら今のPlanetはない。そうして、今までのメンバーに蓮と泰樹を加えた新体制になったPlanetは、健斗をキャプテンに据えて再スタートを切った。新体制になってからは、健斗が体育館を確保し、和也と宏嗣でお金の管理を取り纏めてくれた。更には、蓮と泰樹が率先して助っ人を集めてくれることで紅白戦の人数集めにも苦戦しなかった。チームの管理を複数人でこなしてくれたことで、かなり楽になった。我ながら器が小さいと思うけれど、この年は1年間この状況に甘えようと思った。そして、このおかげで自分が気付けなかったチームの在り方を見つめ直すことが出来たと思う。そしてこの年の夏、久しぶりに対外試合を組むことになった。和也の会社の先輩から申し込まれた練習試合だった。対戦相手は「AZUL UNITED」和也からは、「初心者が多く最近出来たチーム」だという情報が入っていたが、その情報には寸分の狂いもなかった。こちらの初心者は村崎1人。とは言っても、経験者の中で数年揉まれてきた村崎がここで臆するはずもなく、失礼を承知で書き記すが、当時の力の差は歴然だった。しかし、この試合では勝てたことは元より、それ以外にも嬉しかったことが2つあった。1つ目は、試合前に黎一(れお)が「力の差があっても全力で戦うことが礼儀ですね!」と言っていたこと。負けてばかりだったチームが言うセリフではないが、言う通りだと思った。かくいうPlanetも、ベスメン大会で国体に出たようなレベルの選手がゴロゴロいるチームに130点も奪われた試合があった。後半に入ると相手チームはヘラヘラと遊び始めていたし、それほどまでに力の差があった。しかしこちらは至って真面目に頑張っているのだから、悔しくないはずがなかった。たとえ自分たちが力のある立場であったとしても、同じことはしたくないと思っていたので、黎一のひと言が嬉しかったし、自分自身も試合を通じて手は抜かなかった。と、さも自分が相手より上手いような表現をしたものの、この試合の自分の得点は0。限りなく0。油断も隙もない。そして、2つ目に嬉しかったことは何か。ずばりこのAZULというチームに出会えたことだ。まるで活動当初の自分たちを見ているようだった。チームに居る数少ない経験者を中心に初心者のメンバーも含めて全員が楽しそうにプレイしていたし、チームを纏める松尾さんもまた、自分と同じようにチームの中では経験が浅い方だったからだ。スコアに差が開いても笑顔を失わないチームだったし、対戦相手の自分たちが良いプレイをしたら「今のは止めれんばい!」と手を叩いて褒めてくれた。単純に、みんながバスケを楽しんでいた。Planetも初めは間違いなくそういうチームだったし、勝ち負け以前に楽しいが先行していた。いつの間にか勝ちが欲しくなって、試合に出られる時間にも差が生まれて、チームの統制が徐々に取れなくなって、そして崩壊した。AZULのプレイを見ていると、チームを立ち上げた頃の「バスケが楽しい」という単純明快な気持ちを思い出させてくれた。あくまで個人的な受け取り方かもしれないが、チームの始まりから今までを見てきたからこそだと思う。この練習試合を機に、今まで心のどこかで失っていたバスケの楽しさがみるみるうちに蘇った。後々話を聴くと、このチームは松尾さんが営むバー「AZUL」の常連客の皆さんを中心に立ち上げたチームらしく、お店にも度々お邪魔させてもらうようになって、練習試合じゃなくとも「いつでもバスケに遊びに来い!」と言ってもらえるようになった。今では毎月の予定を連絡してくれるので、予定が空いている日にはありがたくお邪魔させてもらっている。AZULの皆さんが聴かれると面白くないかもしれないが、自分の中では「第二の故郷」と形容してもおかしくないくらいに、気持ちよくプレイさせていただいている。チームを再興してくれた健斗・和也・宏嗣・蓮・泰樹。そして、勝ち負け以前に「楽しむこと」の大切さを思い出させてくれたAZUL UNITEDのみなさん。この2つの要因が、今の自分のバスケライフにとって欠かせないきっかけでした。続く […]