第12話はこちら
チームが活動を再開してからというもの、たくさんの人が練習に遊びに来てくれた。
時には強豪校のバスケ部を引退した高校生、時には各メンバーの兄弟、更には別のチームの方が数人で参加してくれたりと、1回限りの参加の方から、助っ人参加を機に今では定期的に参加してくれる方までいる。こうして、いろんな人の協力のおかげで紅白戦や練習試合を繰り返しながら、2017年も終わりに差し掛かってきたところで、チームは本当の再起を図ることになる。
もう1回フープに出ましょう!
誰がきっかけかは覚えていないが、おそらく健斗だと思う。いつも参加してくれているメンバーは二つ返事で了承し、2年ぶりにフープリーグに参加することになった。
前回参加していた時はリーグの参加は強要していなかったものの、「みんなが出るなら…」くらいの気持ちで登録をしてくれていた人もいると思う。しかし今回の選手登録は、同じように「出たい人は登録して、試合は出なくてもいいという人は強制はしない」と言い、それぞれが本当の気持ちで登録したり、登録しなかったりの選択が出来た。…と、個人的には思っている。
部活動と違って、バスケに対する価値観やプライオリティーはそれぞれ違う。仕事が忙しかったり、他にも趣味があったり、更には家庭があったりするので、これが社会人チームの理想の形だと思った。学生時代の内紛や、社会人になってからの活動休止の経験を通して、チームの全員がそれを理解できていた。あるいは、理解できていなかったのは自分だけかもしれないが。
当時、チームで飲み会の席を設けたが、お酒が回ってきた健斗がしきりにこのチームの魅力を語っていた。村崎や和也は、何度も同じ話をする健斗に飽き飽きしながらもにこやかに聴いていたと思う。たしかに健斗はニヤニヤした表情で何度も同じことを繰り返していたが、「分かったって」と諭しながらも誰一人それを否定はしなかった。その日、ほろ酔い気分で撮った集合写真をInstagramに投稿し「#キャプテン健斗がいまアツい」と添えた。
そして、あっという間にチームとしては6回目の年を越し2018年になった。
リーグ再編入となるこの年の最初の練習は、健斗・宏嗣・和也の発案で新春フリースロー大会を行うことになった。チームの企画を運営側目線で見ないという初めての経験。なけなしの運営費でどんな景品を引っさげてくるのかワクワクしながらフリースローを打った。順位まで覚えていないが、上位の賞は練習着やプリペイドカードなど、自分が企画した時よりもかなり豪華な景品が立ち並んでいて驚いた。そして、特賞の景品を見て更に驚くことになる。
この時、特賞を獲得したのは上野。
そしてなんと、幹事の3人が上野に手渡したのはPS4だった。
えええ!!!?
全員が本当に驚いた。中古だと言っていたものの、それでも数千円で買える品物ではない。嬉しい重たさを抱える上野は今にも羽ばたきそうな軽快さでニコニコしている。いつもニヤニヤしている上野が無邪気にニコニコしているのだ。見ているこっちまで幸せになってきたところで、上野が我慢できずに開封しだした。
箱の外装にPS4がしっかりと描かれている。中身なんてわざわざ開けなくても分かっていると思っていた次の瞬間。
は!?
は!?!?
上野の表情が一変した。
なんと、中に入っていたのはパンツ1枚と箱びっしりに詰め込まれた2リットルのペットボトル(水入り)だったのだ。ペットボトルを空にせず重みを持たせ、幹事がPS4を勿体ぶることで上野の喜びもひとしお。用意周到な作戦で見事に上野を地獄の底に叩き落とした。
3人の計画には心底感動したし、普通のフリースロー大会で終わらせないホスピタリティ。どんなタイミングだよと揶揄されるかもしれないが、こいつらにチームを任せてよかったと確信した。
この後、なおも勢いの止まらない3人によって複数人がパイ投げをありがたく頂戴することになる。新年一発目の練習は笑いの絶えない思い出となった。
続く
最終話・第14話はこちら
Other
2件のコメント
コメントは受け付けていません。
[…] 第11話はこちらチームの活動が止まってから、1年の歳月が流れようとしていた頃、以前と同じように健斗から連絡があった。ちょっと話したいことがあるんですけど…。別のチームを見つけたからそっちで活動しますとか、そういう話かもしれないと思いながら、近所のファミレスで集まることになった。そして健斗の口から、意外な言葉が出てきた。和也と宏嗣と、やっぱりこのチームでもう1回活動したいって話をしました。和也の友達の蓮と泰樹も一緒にしたいって言ってくれているので、またチームとしてやり直したいです。相変わらずカワイイ顔をしていた健斗だったが、暫く会わないうちに頼もしくなっていた。そして、この話をこの場に、一番に持ってきてくれたことが嬉しかった。チームの活動が止まった後、何度も後悔していた。事実上、チームを活動休止に追いやってしまった自分のやり方を責める日もあった。健斗はもう一度チャンスをくれないかというニュアンスでお願いをしに来てくれたが、自分も同じ気持ちだったし、逆に自分がチャンスをもらいたいくらいだった。しかし、健斗の目は本気だった。この1年、健斗は知り合いの別のチームでバスケを続けていて、チーム運営の実情を見た。そのチームは、自分の中学時代のコーチが所属しているチームだったのだが、定期的にキャプテンを変更したり、みんなで集まって方針を話し合ったりしていたそうで、健斗の目には新鮮に映っていた。そして同時に、「長野さんはこれを5年以上も1人でやり続けていたのか」と思ったとのこと。かなり苦労を感じていたことは否定しないが、健斗が1年間所属していたチームほど活発ではなかったので、おこがましいと思った。それでも健斗は、別のチームに所属することでPlanetのこれまでを客観的に捉えてくれるような人間に成長していた。健斗やその年代のメンバーの熱意をありがたく受け取って、チームとしての活動を再開することに賛成した。この時、彼らが発起してくれなかったら今のPlanetはない。そうして、今までのメンバーに蓮と泰樹を加えた新体制になったPlanetは、健斗をキャプテンに据えて再スタートを切った。新体制になってからは、健斗が体育館を確保し、和也と宏嗣でお金の管理を取り纏めてくれた。更には、蓮と泰樹が率先して助っ人を集めてくれることで紅白戦の人数集めにも苦戦しなかった。チームの管理を複数人でこなしてくれたことで、かなり楽になった。我ながら器が小さいと思うけれど、この年は1年間この状況に甘えようと思った。そして、このおかげで自分が気付けなかったチームの在り方を見つめ直すことが出来たと思う。そしてこの年の夏、久しぶりに対外試合を組むことになった。和也の会社の先輩から申し込まれた練習試合だった。対戦相手は「AZUL UNITED」和也からは、「初心者が多く最近出来たチーム」だという情報が入っていたが、その情報には寸分の狂いもなかった。こちらの初心者は村崎1人。とは言っても、経験者の中で数年揉まれてきた村崎がここで臆するはずもなく、失礼を承知で書き記すが、当時の力の差は歴然だった。しかし、この試合では勝てたことは元より、それ以外にも嬉しかったことが2つあった。1つ目は、試合前に黎一(れお)が「力の差があっても全力で戦うことが礼儀ですね!」と言っていたこと。負けてばかりだったチームが言うセリフではないが、言う通りだと思った。かくいうPlanetも、ベスメン大会で国体に出たようなレベルの選手がゴロゴロいるチームに130点も奪われた試合があった。後半に入ると相手チームはヘラヘラと遊び始めていたし、それほどまでに力の差があった。しかしこちらは至って真面目に頑張っているのだから、悔しくないはずがなかった。たとえ自分たちが力のある立場であったとしても、同じことはしたくないと思っていたので、黎一のひと言が嬉しかったし、自分自身も試合を通じて手は抜かなかった。と、さも自分が相手より上手いような表現をしたものの、この試合の自分の得点は0。限りなく0。油断も隙もない。そして、2つ目に嬉しかったことは何か。ずばりこのAZULというチームに出会えたことだ。まるで活動当初の自分たちを見ているようだった。チームに居る数少ない経験者を中心に初心者のメンバーも含めて全員が楽しそうにプレイしていたし、チームを纏める松尾さんもまた、自分と同じようにチームの中では経験が浅い方だったからだ。スコアに差が開いても笑顔を失わないチームだったし、対戦相手の自分たちが良いプレイをしたら「今のは止めれんばい!」と手を叩いて褒めてくれた。単純に、みんながバスケを楽しんでいた。Planetも初めは間違いなくそういうチームだったし、勝ち負け以前に楽しいが先行していた。いつの間にか勝ちが欲しくなって、試合に出られる時間にも差が生まれて、チームの統制が徐々に取れなくなって、そして崩壊した。AZULのプレイを見ていると、チームを立ち上げた頃の「バスケが楽しい」という単純明快な気持ちを思い出させてくれた。あくまで個人的な受け取り方かもしれないが、チームの始まりから今までを見てきたからこそだと思う。この練習試合を機に、今まで心のどこかで失っていたバスケの楽しさがみるみるうちに蘇った。後々話を聴くと、このチームは松尾さんが営むバー「AZUL」の常連客の皆さんを中心に立ち上げたチームらしく、お店にも度々お邪魔させてもらうようになって、練習試合じゃなくとも「いつでもバスケに遊びに来い!」と言ってもらえるようになった。今では毎月の予定を連絡してくれるので、予定が空いている日にはありがたくお邪魔させてもらっている。AZULの皆さんが聴かれると面白くないかもしれないが、自分の中では「第二の故郷」と形容してもおかしくないくらいに、気持ちよくプレイさせていただいている。チームを再興してくれた健斗・和也・宏嗣・蓮・泰樹。そして、勝ち負け以前に「楽しむこと」の大切さを思い出させてくれたAZUL UNITEDのみなさん。この2つの要因が、今の自分のバスケライフにとって欠かせないきっかけでした。続く第13話はこちら […]
[…] 第13話はこちら2018年4月、Planetは2年ぶりのフープリーグのコートに立った。このシーズンは、男子7部リーグまで拡大したうちの6部リーグを戦った。シーズン中に蓮が愛知へ旅立ったり、健斗が福岡へ転勤になったりと、度々メンバーが欠けることがあったものの、その度に全員でカバーしながらシーズンを戦い抜いた。苦しい試合では、高校3年生だった秀ちゃんと高校を卒業したばかりの宇くんという若いメンバーを中心に対抗した。これまで戦ってきたリーグ戦は「負けてばかりで稀に勝つ」という試合が多かったものの、このシーズンに限っては「勝ったり負けたり」を繰り返すような展開。更には、年間の上位4チームが参加できる決勝プレーオフにも進出することに。せっかくここまで来たのなら上位を…と張り切って臨んだが、準決勝でWINGSに惜しくも敗戦。プレーオフに限っては残念な結果となってしまったが、順位は堂々の3位。全員の力で、チームとして初めて入賞を果たすことが出来た。そして、この物語を綴ろうと思った理由とは。前述の通り、蓮は愛知、健斗は福岡で生活している。更には、秀ちゃんが大学進学とともに上京し、宇くんはシーズン終了後にステップアップし3部のチームへ活躍の場を移すこととなった。その他にも、家族が増えて参加頻度が減ったメンバーや転職を機に試合に参加できなくなるメンバー、後に県外へ出ていくメンバーも複数いる。つまり、Planetとしてしっかりと活動できるのはおそらく2019年が最後のシーズンになるということ。入賞を勝ち取った昨シーズンの終了後にこの事実を知って、本当に残念に思った。それと同時に、このチームのこのメンバーで戦える最後のシーズンを大切にしたいとの思いから、これまでのチームを振り返るためにこの物語を綴りたいという気持ちに至った。小規模なりにSNSで宣伝したり、Team Historyを通じてこのホームページを知ってもらいたい気持ちももちろんあったが、大きい理由はむしろ「自己満足」だった。Planetは、長崎で活動するチームの中で言えばいわゆる「弱小チーム」だ。この物語で綴ってきたほど綺麗な出来事ばかりではなかったし、これまで経験してきたことはどんなチームでも通る道なのかもしれない。この小さな歴史を綴ること自体、「何を大真面目に」という見方をされる場合もあるだろう。しかし、学生の頃に立ち上げた初心者だらけのチームが「社会人バスケ」のステージに乗り込み、その中で揉まれて、幾度も押し寄せた苦しい壁を越えて、下部リーグながら入賞する喜びさえ味わえた。余談ではあるが、先日地元のTV番組でご紹介いただいたりもした。こんな経験が出来たのは、ひとえに自分の発言に賛成し一緒にHYTを立ち上げてくれた平田・増田。Planetとして活動するきっかけを作ってくれた上野・敦志。活動休止後に再起を促してくれた健斗・宏嗣・和也。そして村崎・蓮・泰樹をはじめ、今までもこれからもチームに関わってくれたメンバーや周りの支えがあってこそだと、心から感謝している。本当にありがとう。本当は全員の名前を書き記してお礼を言いたいが、かなりの人数になるのでご容赦いただきたい。およそ8年間の活動を通して、バスケットボールプレイヤーとしても、そして人間としても大きく成長させてもらったし、たくさんの繋がりや出会いもあった。このチームは、自分の人生の中で忘れられない思い出であり、財産であり、宝物であり続けると思う。そして迎える最後のシーズン。Planetは、8部リーグまで拡大したフープリーグの7部で戦う。開幕戦は4月28日。対戦相手は「AZUL UNITED」これもまた、巡り合わせなのかもしれない。AZULは初めての対戦以降めきめきと実力を伸ばし、ついに先日の練習試合で敗れてしまった相手。チームの成長が著しいため羨ましく感じてしまうが、もちろん勝ちたい。かなり手強いライバルだが、リベンジに燃えるPlanetのメンバーは気合十分だ。必ず、最後まで走り続けよう。完[あとがき]「長崎から展開するエンターテインメント」と謳っているこのサイトで、果たして私的な話を連載していいものかという迷いはありました。更に言えば、当初の予定では毎日配信するコンテンツの間に挟む程度の不定期連載で考えていたものの、綴り始めたら溢れる気持ちを抑えることが出来なくなり、気づけば2週間の間毎日更新。記事のイメージを飾る画像も体育館の写真ばかりで、正直飽き飽きしてしまった方もいるかと思います。最後まで定期的に更新してしまい、大変申し訳ありませんでした。笑大変勝手では御座いますが、個人的には「記事を書く」というスキルを身に着けるためのいい機会になったと捉えていますし、このサイトを見てくれている方が少ないであろう今の段階でこの試みができたという点では、非常に有意義な2週間だったと感じています。明日からはまた、以前のように好きなモノ・コトについての記事や、短編のエッセイを配信していけたらと考えております。また、この話を綴るにあたって動画の編集も疎かになっておりましたので、次回以降のYouTubeの動画についても編集を進めてまいります。乞うご期待!です。最後に、この物語の中での表現などで不快な思いをされた方がいらっしゃった場合は申し訳ありません。また、記憶を辿りながらの執筆となりましたので、若干事実と異なる点があるかもしれませんが、そちらについてはご容赦いただけると嬉しいです。主にPlanetのみんな。笑かなり美化したように映っているかもしれませんが、これまで抱えていた正直な気持ちを真摯に綴ったつもりです。最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。今後とも、「あそふく」をよろしくお願いいたします。ちょーの第1話はこちら第2話以降につきましては、第1話より順番にリンクを掲載しておりますので順番に辿っていただけると幸甚です。よろしくお願いいたします。 […]