「キツツキと雨」役所広司が醸し出す人の魅力。

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最近は専ら妻に職場に送ってもらっているのだが、信号待ちをしていると、原チャリに乗った祖父がかなりの確率で横を通り過ぎて行く。そして私たちが乗る車の隣に差し掛かるところで必ず停まり、「おはよう!」とか「昨日はアジ釣りに行ってきたぞ!」と声を掛けてくれる。

祖父は、現在70歳。

あと4ヶ月もすると71歳になるのだが、今なお現役の配管工として毎日汗水垂らしながら働いている。小さい頃から一緒に住んでいたのだが、口数こそ多くないものの、家族のために必死に働いてくれた祖父の背中を見て育ってきた。

そんな職人気質の祖父は、家に帰ってくると祖母によく「何をモゴモゴと話しているのか」と責められている。お酒が好きな祖父は、人と話すのが好きなくせに声のボリュームが少々弱い。声を張ればいいのだろうが、働いているとはいえ70歳のおじいちゃん。無理は言えない。輪をかけるように祖母は最近耳が遠くなってきているようで、たまに責められる祖父が可哀想に見える日もある。母も同じことを言っていた。

もちろん、2人のやり取りの中で祖父が悪い場合もある。ある日、祖母が大切に育てていた植物の枝を、何も言わずにこれでもかと言うほどに切り落とした。祖父としては玄関の動線を確保したかったようだが、「つるっぱげ」と形容してもいいほどの有り様。これに祖母が激怒し、「植物は私の大切な趣味なのに」と怒鳴られていた。

読んでくれている人によっては祖父母の仲の悪さに苦労している孫の愚痴に聞こえるだろうが、そうではない。祖母はグチグチ言いながらも家族のために働いてくれている祖父に感謝しているし、祖父だって口下手なだけで足の悪い祖母を大切に思っている。

お互いに不器用なのだ。
そして、この人間くさいやり取りが何とも面白い。

本題に移ろう。

「キツツキと雨」は、とある山村の職人気質な木こり・岸克彦(役所広司)と、この村に映画撮影のためにやってきた気弱な新人映画監督・田辺幸一(小栗旬)が、映画の撮影を通して交流を深めていく様子を描いたヒューマンドラマだ。

この映画の見どころは、なんと言っても役所広司さんの演技だ。「妻を亡くしてもうすぐ2年、無職の息子と暮らしながら、医者に言われた血糖値を気にして甘いものを控える木こり」という設定を、ものの見事に演じられている。ひょんなことから小栗旬演じる映画監督と知り合い、この若者の気弱さに呆れかえるが、撮影を手伝わされるうちに映画の魅力に惹かれ、遂に映画撮影のために「風邪を引いた」と仕事を休んでしまう呆れた男である。挙句の果てに同僚にバレてしまうのだから、どうしようもない。

この人間のどうしようもなさを、演技とは思わせないほど自然に演じてしまうのだから凄い。見ている人を飽きさせない役所広司さんの魅力たるや。役所広司さんだけではない。この映画に出てくる人たちの「どうしようもなさ」が何とも可愛らしいのだ。

実はうちの祖父は俳優の寺尾聰さんに似ている。そして、寺尾聰さんが出演されていたドラマ「陸王」で役所広司さんの演技に打たれ、彼が長崎県出身であることに驚く。更には、長崎バスの運転士まで演じているではないか。一見、無理矢理のように見えるかもしれないが、私の中ではこれらが全て繋がって「俳優・役所広司さんが好きだ」というところに辿り着いた。

どんなところで誰と知り合うかも分からない。どんな出来事で何を知るかも分からない。大袈裟かもしれないが、その根底には人と人の繋がりが確かにあって、それぞれが抱える「人のどうしようもなさ」が、この繋がりをそっと支えているのかもしれない。

今度の週末は、実家に帰ってごはんを食べよう。
仕事帰りの長崎バスの中で、ふとそう思ったのだった。

☆追伸
「キツツキと雨」の主題歌は、私の大好きな星野源さんの「フィルム」という楽曲でした。映画にぴったりの素敵な楽曲なので、ぜひ聴いてみてくださいね。

ちょーのでした。

☆本日紹介した内容について

「キツツキと雨」公式サイト

長崎バス・80周年CMスペシャルサイト

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